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廃プラスチックのケミカルリサイクル技術と可能性

廃プラスチックのケミカルリサイクル技術と可能性

リサイクル手法とケミカルリサイクルへの期待

環境問題への対応が喫緊の課題となる昨今、リサイクルに関する関心も技術力も、どんどん高まっています。
リサイクルがマテリアル、ケミカル、サーマルという3つの種類に分類されていることは、既に多くの方が認知されているかと思います。
一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2021年における日本国内の廃プラスチック総排出量は824万t、その有効利用量としてはマテリアルリサイクルが177万t、ケミカルリサイクルが29万t、サーマルリサイクルが511万tという内訳になっており、残りの107tが単純焼却されています。
現状全体の4%程度にとどまるケミカルリサイクルですが、マテリアルリサイクルほど物性を問わず、汚れや不純物を含む場合でもリサイクルが可能です。
今サーマルリサイクルや単純焼却で処理されている排出分がケミカルリサイクルへと移行できれば、より高度な資源循環が進むとして、推進に期待が寄せられています。
(参考文献 一般社団法人プラスチック循環利用協会. 「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」p.5廃プラスチックの総排出量・有効利用量・有効利用率の推移のデータを基にCBAにて作成)

 

ケミカルリサイクルの基礎

廃プラスチックを化学的(ケミカル)にリサイクルするとは、具体的にどういったことなのでしょうか。
プラスチックは、主に炭素、水素の原子を組み合わせて非常に長い分子鎖(ポリマー)となった化合物を指します。
その結びつき方のバリエーションにより、様々な種類のプラスチックが生み出されてきました。ケミカルリサイクルは、この化合物を分解し、元の原料や他の化学品に再生する方法です。ISO規格では「フィードストック(原材料)リサイクリング」とも呼ばれており、方法としては以下があります。
  • 油化―熱分解によりプラスチックを油に変換する
  • ガス化―高温でプラスチックをガス化し、生成された合成ガスをアンモニアなどに変換する
  • コークス炉化学原料化―コークス炉で処理し、化学品や燃料に変換する
  • 高炉原料化―高炉で鉄鉱石の還元剤として使用する
  • 原料・モノマー化―解重合という化学反応でプラスチックを分解しモノマー(ポリマーを構成するプラスチックの最小単位)に戻す。特にPETなどのリサイクルに有効

今回、ガス化により世界で唯一、商業規模でのプラスチック・ケミカルリサイクルを行う株式会社レゾナック川崎事業所(神奈川県川崎市)を訪問し、プラントを見学させていただきました。

ガス化技術の詳細とレゾナックの取り組み

ガス化は、プラスチックを高温で処理してガス(合成ガス、主に一酸化炭素と水素の合成ガス)に変換する方法です。
現在、株式会社レゾナックでは主にプラスチック製容器包装を回収し、資源化しています。
広範な廃プラスチックが処理でき、またCO2排出削減効果が高く環境負荷が少ないことが、他のケミカルリサイクルと比較し優れた点と言えます。
生成された合成ガスから得られる水素に窒素を加えて製造されたアンモニアは、「ECOANN(エコアン)」という名で商標登録されています。アンモニアはアクリル繊維やナイロン繊維、窒素系肥料や医薬品、更には火力発電所の排煙脱硝薬剤など、非常に多くの製品や用途に利用されており、ECOANNはグリーン調達品として高い評価を有するものです。

一日に200tもの廃プラスチックを処理する株式会社レゾナックのガス化技術は、廃プラスチックのケミカルリサイクル分野で重要な役割を果たしており、環境負荷の低減と資源循環の促進に大きく寄与するものであると言えます。

(参考文献 株式会社レゾナック 教えてDr. ケミカルリサイクル‐アンモニアの原料化)

ケミカルリサイクル技術の課題と未来

マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルの手法よりもプロセスや設備投資にコストがかかることは、ケミカルリサイクルの一つの課題であります。また、化学反応を進行させる上で高温・高圧などの状態を作るにはエネルギーが必要であり、エネルギー効率を改善するための研究が、世界各国で進められています。
近年は、石油価格の変動とエネルギー政策の転換などの背景が加わり、「油化」に注目が集まって日本国内でも大規模な油化施設がいくつか建設中です。
手法としては以前からあったものの、プロセスの採算性などに課題があり、2000年代半ばまでに大型設備の多くが撤退を余儀なくされていました。
ですが、昨今は技術やエネルギー効率が向上し、今後はケミカルリサイクル事業の中で存在感を示すものとなっていきそうです。
ケミカルリサイクル全体を見ると、各技術はそれぞれの役割を持ち、相互補完的な関係にあるといえるでしょう。混合プラスチックの処理に適するものもあれば、特定の種類のプラスチックにおいて有効な場合もあります。また、地域のインフラや収集システム、収集量によっても最適方法は異なるでしょう。それぞれの技術がそれぞれの強みを活かし、全体としてのリサイクル効率を最大化し、環境負荷を最小限に抑えることが求められています。