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サーキュラーエコノミーの課題とは?日本国内での取り組みや国際的な動向も解説

サーキュラーエコノミーの課題とは?日本国内での取り組みや国際的な動向も解説

地球環境の悪化やSDGsへの注目が高まっていることを背景に、サーキュラーエコノミー、すなわち循環型経済に取り組む企業が増加しています。国際的な動向に合わせて、日本のサーキュラーエコノミーへの取り組みは、今後もますます推進されるでしょう。

廃棄物排出事業者としても、サーキュラーエコノミーのメリット・デメリットを理解し、事業に取り入れていく必要があります。今回の記事では、サーキュラーエコノミーの国際的な動向および国内の取り組みを紹介します。

また、サーキュラーエコノミーの課題と、メリット・デメリットについても解説していますので、導入の参考にしてみてください。

サーキュラーエコノミーとは?

日本語訳で「循環型経済」を意味するサーキュラーエコノミー。循環型経済とは、従来は廃棄対象となっていた材料や製品を、資源としてリサイクルし廃棄物を出さないことを目指す経済システムです。

従来の経済システムはリニアエコノミーと呼ばれ、日本語訳は「直線型経済」とされます。直線型経済では、資源を抽出し製造したものを消費、そして廃棄する一方向の流れとなっています。

世界的な人口増加と、大量消費・大量廃棄によってリニアエコノミーの経済システムに限界が来たため、サーキュラーエコノミーが世界的に注目されはじめました。

日本では3R「リユース・リデュース・リサイクル」の考え方が推進されてきましたが、廃棄物が少なからず排出される3Rの考え方にも限界があります。一方でサーキュラーエコノミーは、廃棄物を出さないことが前提のため、世界各国同様に国内でも注目が高まっています。

国内での取り組み

サーキュラーエコノミーを取り入れている国内企業は多くありますが、本記事では2つの事例を紹介します。

ひとつ目は「ファーストリテイリング(ユニクロ)」です。2020年に、回収した服から新たな服を作り上げる「RE.UNIQLO」のプロジェクトを立ち上げました。同年12月にはリサイクルダウンジャケットの発売を開始しています。

店舗にはRE.UNIQLO回収ボックスが設置され、独自の技術でダウンフェザーに再利用したり、CO2削減に貢献する代替燃料に活用したりしています。

ふたつ目に紹介するのは、資生堂・積水化学・住友化学の3社で取り組んでいるプラスチック製化粧品容器の循環モデル構築です。プラスチック製化粧品容器は、使いやすさやデザイン性を重視しているため、分別が難しいという課題がありました。

3社はそれぞれの強みを活かして、店頭でのプラスチック製化粧品容器の回収スキームを構築し、化粧品容器への再利用に取り組んでいます。また、3社が連携を取り関連企業を巻き込むことで、業界全体を通したサーキュラーエコノミーの実現に力を入れています。

国際的な動向

サーキュラーエコノミーを取り巻く国際的な動向は、欧州がリーダーシップを取って推進している状況です。2015年の循環型経済行動計画、プラスチック戦略、エコデザイン指令などEU主導の活動が活発に行われています。

「世界の工場」としてグローバルな産業活動を支えた中国は、廃棄物の増加によって環境悪化の懸念が増しています。

対策として2017年に「外国ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発表し、実施計画により輸入を規制し、自国の環境悪化の軽減に力を入れています。

米国では、2012年に「National Bioeconomy Blueprint(国家バイオエコノミー青写真)」が制定されました。動物や植物の機能を、人類の生活に有効に活用する技術「バイオテクノロジー」への投資を強めて、バイオエコノミーの推進を進めています。

一方で、日本は3Rを主体とした環境活動を推進してきて、2020年に「循環経済ビジョン2020」を制定しましたが、循環経済への対応は諸外国と比較して後れをとっているのが現状です。

サーキュラーエコノミーの課題は?

環境問題が深刻化したことでサーキュラーエコノミーが注目されてきていますが、その中でも特に「海洋ゴミ」による問題が深刻になっています。

また、循環経済で重要な要素となる「廃棄物処理」では、人口減少と都市部集中による地方の過疎化によって、持続可能な廃棄物処理が課題として挙げられます。

廃棄物の持続可能な処理

循環経済では廃棄物の適正な処理が重要ですが、過疎化した地方では、廃棄物処理の担い手不足が問題として取り上げられています。

また、廃棄物処理施設の老朽化が進んでおり、施設を含めた廃棄物処理システム全体の根本的な見直しが必要です。

このような状況下で、地域に新たな価値・サービスを提供する廃棄物処理システムとして次の内容が検討されています。

・広域化・集約化による施設整備・維持管理の効率化
・廃棄物エネルギーを回収し、地域のエネルギーセンターとして活用
・災害時の防災拠点
・廃棄物処理場の見学の場を提供し、環境に関する学びの場として活用

老朽化した廃棄物処理場を再構築し、地域循環共生圏の核として新たな価値を提供する持続可能な廃棄物処理の推進が求められていくでしょう。

海洋ゴミ問題の改善

プラスチックは安価で使い勝手が良いため、大量生産・大量消費の対象となっています。しかし、適切に処理されなかったプラスチックごみはいずれ海に辿り着き「海洋ゴミ」となります。

プラスチックごみは海洋生態系に多大な影響を与えるとされており、現在のペースが続いた場合、2050年には魚の量を上回るプラスチックゴミが海に蓄積すると予測されています。

日本は、2050年までに、海洋ゴミによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案しました。

2021年時点で、86の国と地域が「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有しています。さらにG20では「海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が採択され、定期的な情報共有や相互学習が推進されてきています。

2050年をゴールとした取り組みが国際間で共有されることで、海洋ゴミの課題解決とサーキュラーエコノミーへの転換がより推進されていくでしょう。

サーキュラーエコノミーのメリット・デメリット

サーキュラーエコノミーは、商品やサービスの製造段階から資源回収や再利用を前提としており、資源が循環することはさまざまなメリットをもたらします。

ただし、サーキュラーエコノミーの概念はいまだ成長段階であるため、デメリットが生じているのも事実です。ここではサーキュラーエコノミーのメリット・デメリットを解説します。

メリット

製造段階から資源回収やリサイクルを意識することで、商品を製造する際に必要とする資源の量の効率化が行えます。環境負荷を軽減しつつ、資源投入コストを抑制できます。

また、新たな資源を購入する量が軽減されるため、資源不足や材料費高騰による影響を受けにくく、長期的な事業運営のリスクヘッジにもなりえるでしょう。さらに、SDGsの12番目の目標「つくる責任、つかう責任」にも通じる活動となるため、企業ブランドのイメージ向上にもつながります。

使用する資源の量が減ることで、製造段階の二酸化炭素排出量を抑えられます。廃棄物燃焼時の排出ガスだけではなく、製造段階から抑制できるため、温室効果ガスを減少させられる可能性がある点もメリットです。

デメリット

サーキュラーエコノミーはいまだ成長段階であるため「移行期のジレンマ」があります。例えば自動車では、長期的に見れば電気自動車に切り替えたほうが二酸化炭素の排出力は軽減できますが、電気自動車への切り替えは旧型にあたるガソリン車の製品寿命を早めてしまいます。

サーキュラーエコノミーは製品寿命を長くする考え方であるため、切り替えによって旧型の製品寿命が短縮することとは矛盾が生じるでしょう。また、従来の技術に特化した職種は必要とされなくなるため雇用が失われる懸念点もあります。

サーキュラーエコノミーを実現するにはリサイカビリティ(リサイクルしやすさ)を高める必要があり、リサイカビリティによって製品の設計工程や使用する素材に制限が出てきます。制限によっては余計にコストがかかるため、さまざまな側面から製品設計を行う必要がでてくるでしょう。

また、製品寿命を長くしても、そもそもの製品の需要が無くなってしまう可能性があります。利用者が使いやすいと感じる「質」が失われてしまえば製品寿命は需要とともに無くなってしまうことが懸念点です。

まとめ

今回は、サーキュラーエコノミーの課題と日本国内の取り組み、そして国際的な動向について解説しました。

日本国内ではサーキュラーエコノミーを意識した活動をしている企業が出てきており、今回の記事では「ファーストリテイリング」と、「資生堂・積水化学・住友化学」の3社による取り組みとの2つの事例を紹介しました。

EU主導のもとサーキュラーエコノミーは世界的に推進されており、中国や米国においても活動が活発になっています。しかし、日本では循環経済ビジョン2020が制定されたものの諸外国に比べて後れをとっている状況です。

海洋ゴミの問題が深刻になり、2050年には魚よりもゴミの量が上回る予測が出されています。この課題を受けて日本では「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案されG20の首脳と共有されました。

また、サーキュラーエコノミーの重要な要素である廃棄物処理についても、人口減少による担い手不足の課題があります。課題の解決と地方活性化の一つの対策とを兼ねて、廃棄物処理施設に新たな価値を生み出す活動が行われ、今後はより推進されていくでしょう。

サーキュラーエコノミーの実現に向けては、二酸化炭素排出量が抑えられるメリットもありますが、企業にとっては材料費の低減、および事業のリスクヘッジの効果も期待できます。ただし、製造工程に制限がでることや、製品の需要に対して気をつける必要があるでしょう。