SDGsと産業廃棄物処理との関係性は?目標12の詳細や国内での取り組み事例を紹介
現在、世界各国でSDGsの推進が図られています。日本国内においても2030年に向けてSDGs達成に向けた活動が活発となってくると予想されます。
今回の記事では、目標12「つくる責任 つかう責任」に着目し、産業廃棄物処理との関係を解説します。産業廃棄物が抱える課題や、国内企業の取り組み事例も紹介しますので、参考にしてみてください。
SDGsと産業廃棄物処理との関係
SDGsは2015年に日本を含めた全193ヶ国で、世界共通の目標として採択された「持続可能な開発目標」を指します。2030年をゴールとして全17項目の目標が設定されており、さらに目標を達成するために169項目の具体的なターゲットが設定されています。
全17項目の目標は貧困問題や世界のインフラの課題、ジェンダー平等など多岐にわたります。17項目の中で産業廃棄物と関係が深い目標は、目標12「つくる責任 つかう責任」です。目標12では産業廃棄物の管理や削減する取り組みについて言及しています。
SDGs目標12
目標12「つくる責任 つかう責任」の内容をさらに詳しく見ていきましょう。「つくる責任」は持続可能な方法での生産を意味し、「つかう責任」では責任をもって消費することを指します。目標12で求められているのは、少ない資源でより多くの良質なものを生産することです。
具体的には、天然資源の効率的な利用や食品ロスや廃棄物の削減、化学物質の放出低減などがあります。目標12の中でも産業廃棄物処理と関係があるのは次の内容となっています。
・【12-2】2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する
・【12-3】2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
・【12-4】2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
・【12-5】2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
SDGsは世界的に推進されており、日本は2016年に「SDGs実施指針」を策定し活動を進めています。SDGsの達成には産業廃棄物の課題解決が必要不可欠で、排出事業者としても目標12「つくる責任 つかう責任」への取り組みを行っていく必要があるでしょう。
産業廃棄物の現状
日本では多くの産業廃棄物が排出されている現状があります。2022年に発表された2019年の年間総排出量は3億8,596万トンにもなり、前年度から約700万トンの増加がありました。総排出量の推移としては、1990年まで急激に増加しその後横ばいの傾向が続いています。
次項では、日本国内にて特に課題視されている「最終処分場の逼迫」と「食品ロス」について解説します。
出典:環境省/産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度実績)について
最終処分場
廃棄物は安全に埋め立てができる「最終処分場」で処理されます。最終処分場に持ち込まれるものは、処分の中間処理でリユースやリサイクルができなかったものです。従来の産業廃棄物は海洋投棄もされていましたが、2007年に原則禁止となりました。
土地は無限ではありません。そのため、埋め立てする最終処分場は逼迫します。この現状を把握するために、埋め立て処分が可能な残りの年数「残余年数」が毎年算出されています。
産業廃棄物の2018年時点の残余年数は17.4年です。また、一般廃棄物の残余年数は2019年時点で21.4年となっています。つまり、現在の産業廃棄物総排出量を減らさなければ残り20年弱で処分できる土地がなくなることを意味しています。
最終処分場の土地を増やす解決策は近隣住民の反対などもあるため難しく、多大な労力が必要です。そのため、廃棄物処理の課題を解決するには、サプライチェーン全体を通した廃棄物の削減が求められるでしょう。
食品ロス
世界的に問題となっているのが「食品ロス」です。食品ロスは食べられるにもかかわらず廃棄されていた食品を指します。2019年度には570万トンもの食品ロスが排出されており、前年度からは30万トン減少したものの依然として高い水準で推移しています。
食品メーカーが排出するものは産業廃棄物に分類され、飲食店やスーパー、一般家庭から排出されるものは一般廃棄物に分類されます。最終処分場の逼迫問題もあり2019年には「食品ロス削減推進法」が施行され、削減に向けた取り組みが図られています。
食品ロス削減推進法では、食品関連事業者の「役割と行動」が明文化されました。食品関連事業者は、消費者とのコミュニケーションを通じて食品ロスを削減することが求められていくでしょう。また、消費者に対しても「陳列棚の後ろの商品を取らない」など、意識改革が促されています。
出典:農林水産省/食品ロスとは
廃棄物処理に対する国内企業の取り組み事例
SDGs達成に向けた産業廃棄物処理に対して、国内企業でも取り組む企業が増えてきています。本記事では3社の取り組みを紹介します。
株式会社メルカリ
フリマアプリのメルカリは企業活動そのものが廃棄物抑制につながる会社ですが、Stay Home & Share Smilesのプロジェクトにより、さらに廃棄物抑制につなげる取り組みを行いました。
Stay Home & Share Smilesは、ユーザーが不要品を出品すると出品したアイテム1品につき10円が新型コロナウイルス感染症に係る支援団体へ寄付されるプロジェクトです。
メルカリのような取り組みは、企業が社会的責任を果たすために重要です。メルカリの取り組みは不要品をリサイクルすることで環境保護にも貢献し、同時に新型コロナウイルス感染症の影響を受ける人々に寄付をすることで社会貢献にもつながっています。
出典:株式会社メルカリ/「Stay Home & Share Smiles」寄付プロジェクトのご報告とお礼
サントリーホールディングス株式会社
「プラスチック」を重要テーマとして掲げ、ペットボトルのリサイクルに取り組んでいるのがサントリーです。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」への取り組みを表明し、つくる側としてペットボトルのリサイクルを促進する活動を行っています。
2011年には、ペットボトルから新しいペットボトルをリサイクルするシステムを日本で初めて実用化しました。2030年には、化石由来原料の使用をゼロにする取り組みを表明しています。サントリーは、積極的に環境問題に取り組む姿勢を表している企業といえるでしょう。
出典:SUNTORY/【SDGsとは?】目標12「つくる責任 つかう責任」と私たちにできることを、グラレコっぽく解説!
株式会社エアクローゼット
着なくなった服を回収し、検品・再生を施すことでリユースやリサイクルへ回す取り組みを行う株式会社エアークローゼット。
シェアクローゼットと名付けられたこのプロジェクトによって廃棄物の排出が抑制されます。リサイクルされた服は、ポリエステルの原料や石油の代替燃料として注目されているバイオエタノールとして再利用されます。
まとめ
今回の記事では、SDGsと産業廃棄物処理との関係や廃棄物処理が現在抱えている課題について解説しました。
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」と廃棄物処理の関係は深く、4つのターゲットが廃棄物処理に関する内容です。産業廃棄物の総排出量は高い水準で推移しており、排出量が軽減せず最終処分場が逼迫しています。
残り20年弱で処分場が枯渇する可能性も示唆されており、廃棄物抑制への取り組みがさらに強化されていくでしょう。
廃棄物処理に対してさまざまな国内企業が取り組みを行っており、今回の記事では3つの事例を紹介しました。排出事業者としてSDGsへの取り組みは今後より必要となってくることが予想されるため、今回の記事を参考に自社で取り組みを進めましょう。