日本はSDGsをどのくらい達成できている?現状と課題を解説
SDGsの取り組みとして、2030年のゴールに向けた達成度をSDSN(Sustainable Development Solutions Network)「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が毎年発表しています。
2022年の日本は前年より順位を落としており、さまざまな課題について厳しい判定をもらいました。
今回の記事では、日本が後れをとる要因をSDSNレポートの結果をもとに解説します。事業と密接に関わる内容も多いため、ぜひ本記事をお役立て下さい。
SDGsとは
2015年9月の国連サミットで制定された「持続可能な開発目標」がSDGsです。17の目標と169項目の詳細な目標で構成され、2030年をゴールとして設定しています。内容は「持続可能性」をテーマとして貧困問題やインフラ、環境問題など多岐にわたります。
なお、項目17の目標は具体的に次の内容となっています。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤を作ろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは150カ国を超える国が取り組みを表明しており、日本も2016年に「SDGs推進本部」を設けて、取り組んでいくことを表明しています。
2030年のゴールに向けた達成度については、SDSNから毎年「持続可能な開発レポート」が報告書として発表されています。このレポートでは、SDGs参加国の進捗状況が閲覧可能です。
仮にゴールを達成できない場合、特に罰則はありません。ただし、持続可能性を著しく失うことになるため、SDGsが達成できない場合は地球規模でさまざまな問題が深刻な状態になることが予想されます。
2022年の日本のSDGs達成度は?
日本は2021年から順位を1つ下げて、2022年は19位となりました。2021年、2022年ともに1位となったのはフィンランドで、上位はデンマークやスウェーデン、ノルウェーなど北欧・欧州の国が多く占めています。
SDSNのレポートでは17の目標に対して「目標達成」「課題が残っている」「重要な課題が残っている」「大きな課題が残っている」という4つの指標で達成度を表しています。日本はそれぞれどのような課題を抱えているかを解説します。
目標達成した項目
17項目のうち、日本が目標を達成したのは3項目でした。ゴール4「質の高い教育をみんなに」、ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、ゴール16「平和と公正をすべての人に」が達成した項目です。
上記の結果から、教育や産業、そして平和に対する取り組みは世界からの評価が高いことがうかがえます。
課題が残っている項目
「課題が残る」という評価を受けたのは5項目です。ゴール1「貧困をなくそう」、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」、ゴール8「働きがいも経済成長も」、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」の項目が該当します。
日本でなぜ貧困が課題とみなされているか疑問に感じる方もいるでしょう。しかし、貧困は世界における絶対値での貧困の他に「相対的貧困」の考え方もあります。
「相対的貧困」は、自分が生活している国において、国民の大多数よりも所得が低い場合に陥る貧困を指します。特に子どもの相対的貧困が多く、学校生活においてストレスとなる原因にもなっています。
相対的貧困は、身なりからは判断しづらく支援しにくいことから、社会的な課題として認識されています。
相対的貧困は犯罪につながる可能性もあるため、持続可能性の観点からも解決していくべき課題として挙げられます。
重要な課題が残っている項目
「重要な課題が残る」と評価された項目は3つあります。ゴール2「飢餓をゼロに」、ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、ゴール10「人や国の不平等をなくそう」の3つが該当しました。
「飢餓」については、日本は課題を抱えていない印象を受けるかもしれません。ただし、該当項目には「食料の生産性」の意味も含まれています。
農業に携わる人口が減り続けている「農業の人手不足問題」や、耕地面積が減り続けている「耕作放棄地問題」など、日本が抱える生産性の課題は多いです。持続可能な社会を目指す際に、重要な課題として認識していく必要があります。
大きな課題が残っている項目
「大きな課題が残る」と評価された項目は6つです。
ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」、ゴール12「つくる責任つかう責任」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」、ゴール14「海の豊かさを守ろう」、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」の項目が該当します。
特に、ゴール12の「つくる責任つかう責任」については、2021年から評価を1段階落としてしまっています。廃棄物の排出問題と直結する内容であるため、排出事業者としても特に注目していきたい項目です。
また、ジェンダー平等についても国会における女性議員の割合が、世界と比較して低いことが特に問題視されています。
日本として「大きな課題」として指摘された項目に、重点的に取り組んでいく必要があり、排出事業者としても同様に取り組みを強化する必要があります。
「環境問題」に課題
「大きな課題」と評価された項目の中でもゴール12「つくる責任つかう責任」は特に注目したい内容であり、排出事業者として継続して取り組んでいくべき課題の一つです。
環境問題の課題
ごみの排出における問題が課題として挙げられています。年々減少傾向にはあるものの、ごみ総排出量は4,274万トンであり、東京ドーム約115杯分に相当します。
さらに問題とされているのは再利用率であり、ごみの80.5%は再利用されず直接焼却されているのが現状です。ごみの焼却量の多さからCO2の排出が課題として挙げられます。
廃棄物の問題を解決するべく、国はさまざまな法律を制定しています。排出事業者として情報を常に取り入れて、経営方針に反映させていく柔軟な対応が必要となります。
出典:環境省/一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について
企業がSDGsを実践するには
2030年のゴールに向けて、今後よりいっそうSDGsへの取り組みが強化されていくことが予想され、排出事業者としても力を入れて取り組んでいく必要があります。
SDGsを経営に取り入れるにあたって「SDGコンパス」という指針があります。SDGsを取り入れるための道しるべとなるように作成されており、次の5つのステップで構成されています。
1.SDGsの理解
2.優先課題の決定
3.目標設定
4.経営への統合
5.報告とコミュニケーション
まずはSDGsを読み解き理解すること。理解した内容をもとに、自社の優先すべき課題を洗い出します。課題抽出後は、KPIの設定と、達成するための具体的なアクションを考えます。
ここまで考えてきた内容を経営方針へコミットし、外部に向けて積極的に発信を行います。PDCAを回すことも重要とされており、ブラッシュアップしながら何度も計画と実行、振り返りと反映を行っていきます。
まとめ
今回は、日本のSDGsにおける達成度を確認しました。先述のとおり、2022年のSDSNによるレポートでは日本は19位と順位を下げているのが現実です。
17項目中、目標達成とされているのは3項目のみで、他は課題ありとみなされているだけでなく、6つの項目については「大きな課題がある」と判定されています。
特にゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」、ゴール12「つくる責任つかう責任」の2つは今後取り組むべき課題であり、排出事業者としては今後の経営方針にも影響を及ぼす可能性があります。
現在の日本における課題と、自社の課題とを分析し、SDGsを学んで実践していきましょう。