電子マニフェストの登録ができない!緊急時の対策方法を紹介
電子マニフェストサービスの不具合は起こりうる?
電子マニフェストサービスの利用に際し、ネットワークに障害が生じてしまうと、業務へ大きな影響が及ぶことは避けられません。
電子マニフェストを利用する廃棄物排出事業者は、万が一障害が起きた際、影響を最小限に留めるための予防策が求められるでしょう。
過去に起こった電子マニフェストの不具合の事例
メリットが多く利便性も高い電子マニフェストサービスではありますが、過去には不具合も起こっています。
2021年5月6日から翌7日にかけて、日本産業廃棄物処理振興センターによって運営される電子マニフェストシステム(JWNET)にて障害が発生しました。
具体的に生じた不具合としては、利用者がログインを試みても画面が切り替わらなかったり、画面が表示されなかったりといったものです。
その後5月8日からサービス提供が停止され、約2日後の10日早朝に運用が再開されました。このように、一度障害が発生すると復旧までに数日間を要するケースがあることも把握しておきましょう。
出典:JWNET
マニフェストなしでは産業廃棄物の運搬処理は行えない
1998年以降、すべての産業廃棄物についてマニフェストの使用が法律で義務付けられており、産業廃棄物の処理に際して排出事業者及び処理業者がマニフェストを交付しなかった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科される可能性があります。
たとえJWNETが使えない状態になったとしても、マニフェストのない状態で産業廃棄物の運搬処理は行えない、という原則を抑えておきましょう。
出典:JWNET
電子マニフェストが使えない時に備える緊急時マニュアル3選
では、何かしらの要因によりJWNETに不具合が生じて電子マニフェストが使用できない場合、排出事業者はどのように対応すべきでしょうか。ここでは3つのポイントを紹介します。
1.受渡確認票は印刷しておくかフォーマットを用意しておく
産業廃棄物の収集運搬事業者が運搬時の携行を義務付けられているものの一つに、受渡確認票があります。
運搬を担当する運転手がスマートフォンやタブレットなどで即時に情報を提示できる場合、書類形式で携行する必要はありませんが、デバイスの故障や通信圏外などのリスクに備え、印刷されたものも所持しておくと安心でしょう。
受渡確認票はJWNETから印刷でき、排出事業者が産業廃棄物の引き渡し日の前に予約登録していれば、あらかじめ受渡確認票を印刷しておくことも可能です。
しかし、もしJWNETに不具合が起こった場合、印刷ができなくなって現場が混乱することも考えられます。
こうしたケースの対処法として有効なのが、法律によって規定された記載必須項目を入力するためのフォーマットを、排出事業者が別途Excelファイル等の形式で事前に用意しておくことです。
このフォーマットには、運搬する産業廃棄物の種類及び数量、運搬する産業廃棄物を積載した日ならびに積載した事業場の名称、所在地及び連絡先、そして運搬先の事業場の名称、所在地及び連絡先を適宜入力します。
フォーマットを用意していない排出事業者は、JWNETにおいてExcelで用意されている受渡確認票のサンプルをダウンロードし、必要事項を入力することでも代用可能です。
2.過去の受渡確認票のコピーを準備して変更すれば使用可能
受渡確認票は、必要な項目が記入されている限りにおいて様式は問われず、過去のものをコピーし記載内容を変更して使用することもできます。
コピーを用いると、場合によってはマニフェスト番号や引き渡し日など一部分を修正すれば済むため、必要な書類を簡単に作成できるでしょう。
3.復旧後すぐに登録すれば違反ではない
排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際同時に発行しなければならない紙マニフェストとは異なり、JWNETにおける電子マニフェストの交付は3日の猶予期間が認められています。
電子マニフェストでは、収集運搬業者や処理業者の業務終了報告も完了から3日以内がルールです。
一方で、先に述べた2021年5月の不具合時には、障害発生時点以降にシステムを利用し登録または報告を予定していた利用者が、復旧後速やかに情報処理センターへの登録または報告を行ったケースについては法律違反を問わないよう、環境省から都道府県等へ通達する措置がとられました。
この事例を踏まえ、万が一電子マニフェストの交付ができず何らかの障害が疑われる際は、JWNETセンター及び環境省の発出する情報を随時確認するとともに、復旧後は関係各所へ素早く報告・登録できるよう準備しておきましょう。
出典:JWNET
一時的に紙マニフェストを発行するとどうなる?
ネットワークの不具合、自然現象、電力会社による停電などによって電子マニフェストを発行できない場合、排出事業者には一時的に紙マニフェストを発行するという選択肢もあります。
しかしその場合、紙マニフェストならではの作業や手続きが生じることを把握しておかなくてはなりません。
例えば、紙マニフェストを交付することで、排出事業者には伝票の保存義務が発生します。紙マニフェストを交付した排出事業者とその委託先にあたる業者は、所定の伝票を5年間保存することが必要です。
そのため、普段電子マニフェストを使用している排出事業者の場合、紛失防止や保管方法・場所に配慮する必要が生じることでしょう。
また、排出事業者は年に1回の都道府県知事等への報告が必要であることに加え、一度発行した紙マニフェストは取り消せず、破棄すると保存義務違反になってしまいます。
したがって電子マニフェストが発行できない場合、すぐに紙マニフェストを発行するのではなくまずシステムの復旧を待ち、受渡確認票に関してはあらかじめフォーマットやコピーを作っておくなどの対策を行うことで、現場の混乱や追加の手続きを最小限に抑えられるでしょう。
出典:e-Gov法令検索
まとめ
電子マニフェストは官民一体となって普及が推進されており、JWNETに登録する企業は年々増加傾向にあります。
紙マニフェストと比較すると便利な点が多い電子マニフェストですが、ネットワークを介してやりとりが行われる以上、何らかの要因によって突然使えなくなるリスクも考慮しておかなくてはなりません。
仮にJWNETに不具合が生じ、電子マニフェストにかかる手続きができなくなっても対応策は存在しますので、もしもの際に備えてあらかじめ確認しておくことが大切です。
また、電子マニフェストの使用方法や発行できない場合の対策については、事業所の複数人で知識や情報を共有しておくことが望ましいでしょう。